兄ちゃん
「『マイナーチェンジシリーズ』一時中断。
先日感じた事を、ちとコラム風に…。」
兄
「最近、北京オリンピック関連が、色々と話題になってます。
聖火リレーも『Extreme Torch Relay』 ( エクストリーム聖火リレー ) なんて、
シャレで競技化され、動画があちこちでアップされてたりして…。」
兄
「『中国憎し』とまでは言いませんが、ワシも"右巻き"の人間なんで、
諸々の中国関係のニュースは、不愉快な気持ちで見ておりますが、
これに便乗して、
『中国人は、日本国内から出て行け』なんて言う人も中にはいたりします。」
兄
「先日、本業と関係無い仕事で、ある印刷・製本の会社を訪れました。
色々お偉いさんから話を聞く予定があったんですが、
少々待ち時間がありまして、煙草を吸える所が無いか先方の方に尋ねました。
今のご時勢、会議室、応接室共"禁煙"になっている様で、
工場の喫煙所しか吸える所が無いとの事。
まぁ、吸えればどこでも構いません。場所を伺って、一人喫煙所へ。
丁度、工場の休憩時間と重なった様で、
何箇所か設置されていた喫煙所はどこも人が一杯でした。
その中の一つにワシもお邪魔して、至福の一服を…。
と、ある事に気付きます。
そのワシがお邪魔した喫煙所、ワシ以外全員が中国の人達。
会話が皆、中国語。中国語の中にも色々言語があるらしいですが、
ワシには区別が付きません。
付きませんが、少なくとも日本語ではありません。」
兄
「一服を終えて、お偉いさんからの話を聞いている時に、
ちょっと気になって、何名位中国の方が働いているのか尋ねてみました。
所謂"工員"としては、8割から9割が中国の方だそうです。
従業員全体としては、もうちょっと比率は低くなるらしいのですが、
純粋に工員としては、その位だそう。
つまり、"係長"とか"課長"とか"部長"などは、
今の所全員日本人なんだそうですが、
実際に現場で働いている人達の8割以上が中国の方達って事らしいです。」
兄
「その業界の方々には申し訳無いですが、印刷業と言えば、
昔で言う所謂『3K』。キツイ仕事である事は皆さんご存知だと思います。」
兄
「お偉いさんとの話も済んで、特別に製本をしている工場を見せて頂きました。
あまり詳しい事は言えませんが、
国内シェアNo.1企業の店舗配布用の新しいカタログを作っている工場でした。
同じ敷地内に、
第五工場まで持っている大きな会社だから取れた仕事かも知れません。
"ライン"の仕事はどれもそうですが、
機械に合わせて人間が働く様な所があります。
そして基本的に機械は一回動かしたら、ちょっとやそっとでは止めません。
その工場も、昼食の12時~13時の1時間、15時~15時15分の15分間。
そして通常は18時終業なのですが、
伺った日は納期が迫っていた為21時まで残業予定だそうで、
18時~18時30分までの30分間。
一日に機械を止めるのは、この3回、1時間45分のみ。
機械が動いている間、工員の方々は『途中抜けて一服』なんて事はせずに、
立ちっぱなしで作業をしていました。
見るからに重労働です。今ワシが『やれ』と言われても、
果たして勤まるかどうか…。」
兄
「それでも現場の行員の方々は、黙々と作業をしています。
もう"尊敬"以外の言葉は見つかりません。
これまた失礼な言い方かも知れませんが、
その様な環境に贅沢を知った日本人の若い人が、
"工員"希望で入社してくるのは稀だそうで、
その工場で働いていたのは、いずれ管理職になる予定で、
現場を覚える為に機械を動かしている日本人の若者。
昔っから工員一筋、職人な日本のお爺さん達。
そして、その他は全員中国の方でした。」
兄
「聞けば、気が付いたらこういった比率になっていたそうで、
日本の若者は、入社しても半分も残らないそうです。
ワシは『日本の若者は、だからダメなんだ』とか、
『中国の人は辛抱強くて逞しい』とか、そんな事を言うつもりはありません。
なんせ"右巻きの人"なんで…。
これは、社会や環境が影響して長い年月の内に今の状況になっただけで、
強いて言えば、ワシ等や、
もっと上の年代が"良かれ"としてきた結果なのです。」
兄
「今回の事で、ワシが思ったのは、
『中国人は、日本国内から出て行け』と言っている人達は、
どれだけの覚悟があってそう言う言動をしているのだろう、と言う事。
この工場一つをとってみても、
働いている中国の方々全員を日本人で補おうとした場合、
恐らく、相当の人件費を確保しないと人は集まらないでしょう。
中国の方々が安い労働力だ、と言う事ではなく、
同じ賃金では、日本人の労働力の確保は難しいだろうと言う事。
それでなくても『少子化』が叫ばれて久しいのですから…。」
兄
「従業員の賃金が上がれば、それは商品の価格に反映されます。
今流行のフリーペーパーや、お店でタダでもらえるカタログなどは、
スグに姿を消してしまうでしょう。
紙媒体の価格の高騰は、広告費の高騰にも繋がります。
今の日本で、広告費にお金を使わない企業は無いのではないでしょうか。
確かに『広告を打ってる余裕などウチには無い』と言う所もあるでしょうし、
『広告など打たなくても、ウチには"ウデ"がある』と仰る企業もあるでしょう。
ただ、現実には会社が大きくなればなるほど、広告費の割合は増加します。
つまりは、
身の回りにある物全ての価格が高騰する可能性があると言う事です。」
兄
「今の日本の社会を下支えしているのは、
外国人労働者だと言っても過言ではありません。
例えば建設業界も数年前、
規制の関係で産業廃棄物の処分費が高騰しました。
それでも何とか価格の高騰を最小限に留め様と頑張っている、
産業廃棄物処分業者の"置き場"では、
アフリカ系の方々が汗を流して働いています。
彼らがいなかったら、どうなっていたでしょうか…。」
兄
「これが今の日本の現実です。
『"紙"は廃れる』、『その内、ネットに取って代わられる』と言われ続け早幾年。
未だ、"紙"は媒体の王様である、と『本好き』のワシは特にそう思います。」
兄
「『言論の自由』が、一応形式上存在する日本で、
どんな発言をするのも基本的には自由です。
ですが、その発言には現実を受け入れる"度量"と、
それによって起こりうる未来を受け止める"覚悟"が必要なのではないか、
と思うのです。
"絵空事"や、"机上の論理"でものを言うのは、
あまりにも幼稚で、利己的なのではないか。
と、思い至った一日なのでした。」